「ロビンソン・クルーソー」は楽しい読み物ですが、何しろ300年くらい前に書かれた小説なので解説が必要です。 子供向けの本には図解付きのものがありますが、大人だって見たことも無いものは理解できませんから、できるだけ詳しい図解や地図を付けてみました。
なぜ対訳か?: というと、外国映画を観るなら「吹き替え」より「字幕」の方が言葉の持つ響きが伝わるのと同じ理由で、翻訳した文章でもできれば原文と並べておく方が良いからです。 翻訳で分りにくい箇所というのは大抵誤字か誤訳であることが多く、辞書を引きながらでもいいから原文と比較してみると、その間違いに気付くだけでなく英語の勉強になるというメリットもあります。
たとえば嵐の夜に海上から砲火が閃いた時、"in about half a minute"(約半分後)に音が聞こえた―というところが、ある翻訳本では「約半秒ののち」(岩・文庫)となっています。(音速:340m./秒×30秒≒10km.)
"going back about twenty paces"(20歩ほど後退して)というところでは「約20分ほど引き返して」(集・文庫)―となっているものもあって、それだけでも意味がだいぶ違ってしまうだけでなく、翻訳だけで読んでいるとそれが間違いとは気付きにくいのです。
ロビンソンの丸木舟が激しい潮流に押し流されて島からどんどん離れていった時、Y氏訳では「それが30分ほどして」となり、H氏訳では「およそ半時間もたって」、H.S氏訳では「それから一時間半ぐらいたって」―となっていますが、訳文比較だけではどれが正しいのか判らないでしょう。 ちなみに原文では "in about half an hour more" ―となっています。
第9章11話に "as Father Abraham to Dives" とあるのは新約聖書ルカ伝からの引用ですが、その部分を翻訳している本のほとんどは「父アブラハムがダイヴズに向かい」―となっています。 それではユダヤ人の父祖であるエィブラハムにダイヴィズという息子がいたように思えますが、 "Dives" はラテン語訳の聖書から引用された言葉で、英語に直すと "Rich Man"(金持ちの男)になり、人の名前ではありません。
比較的新しい訳の平野氏訳では「父アブラハムが富める人にいった」、その後の増田氏訳では「父アブラハムがダイヴィス[富者]にむかって」、となっています。 このブログでは聖書を読まない人でも判るように、「(ユダヤ人の)父祖アブラハムが生前金持ちだった男に対して」―としておきましたが、「先祖」や「始祖」を指す "Father" を「父」と訳すのも、聖書と無縁な人にとっては分かりにくいものです。
翻訳に当たっては最初手元にあった文庫本を参照してみたのですが、どうも意訳してある箇所が多くてあまり参考になりませんでした。 それで調べてみると、現在日本で販売されている翻訳本は子供向けも含めると十数冊もあって、大きく分けて「原文にほぼ忠実なもの」、「冗漫でくどい部分を省いたもの」、「あらすじだけの子供向けのもの」となります。
原文に忠実なものは現代の我々には退屈で冗漫な箇所が多すぎて読みにくいし、かといって子供向けでも困りますから、このブログは少しだけ簡略化してあります。 それは途中で読むのが嫌になっては何もならないからで――といっても冗漫で重複している部分を削除するくらいで、文章の省略や変更はしていません。 ただし、明らかに前後で矛盾していると思われる数値には修正を加えておきました。 そうでないと、苦労して構築してきたリアリティ(真実味)というイリュージョン(幻想)が簡単に崩れ去って、読者を興ざめさせてしまうからです。
更にこの小説で一番面白く興味深いのは「無人島に漂着してから島を出るまで」のサバイバル(生き残り)生活で、それから先は蛇足に過ぎませんから、このブログはその部分のみを訳した抄訳となっています。 巻末に「翻訳本の比較」も載せておきますので、続きや最初の部分も読んでみたい方はそちらを参照して下さい。
デフォーの時代は大した娯楽も無く今よりのんびりしていたので、物語を主人公の誕生から書き始めても読んでもらえたのですが、現代では無人島にたどり着く前に本を閉じてしまう読者の方が多いでしょうから、私も無駄な努力は省くことにしました。
対訳はできるだけ関係代名詞などを無視して、原文と同じ配列になるようにしてあります。 原文と対比しながら読むことを目的としているので、単語や熟語などの意味も分かるよう直訳に近い形にしておきました。 つまり一番読みにくい訳文と言えるかもしれませんが、あくまでも原文の補助ということです。 一番良いのは翻訳に頼るより原文を読むことなので、一度訳文を読んで内容が分かったら、二回目からは原文にもチャレンジしてみて下さい。
この "N.C.Wyeth" の挿絵は私の知る限り "Walter Paget"(ウォルター・パジェット)と並んで「ロビンソン・クルーソー」の挿絵の最高峰と言えるものですが、ヘルプによるとポストカードなどにして自由に配布しても良いとのことなので、このブログでも使用させていただきました。 素晴らしい挿絵は文章を理解する上での大きな手助けとからです。
W. パジェットの挿絵(1891年)など、現在では「パブリック・ドメイン」(公有)になっている古い挿絵も、本文の邪魔にならない程度に掲載しておきました。
「ロビンソン・クルーソー」は300年もの間に世界中で翻訳されて、英語版だけでも様々な版がありますから、両者は比べてみると微妙に違います。 このブログではその両方を比較して、良いと思われる方を採らせてもらいました。
この小説には本来「章」による区分けはありませんが、それだと読みにくいので多くの本は何章かに分けてあります。 このブログも上記ウェブ・サイトを参考に、その中の3章~18章までを訳してみました。 3章~10章までの孤独な生活を前半(2010年度分)、フライディやスペイン人など他の人物が徐々に登場してくる11章~18章までを後半(2009年度分)として、どちらも8章:100話ずつに分けてあります。
イギリスの「ヤード・ポンド法」の単位も日本人には判りにくいものなので、「メートル法」の換算値を付記しておきました。
原作の英語では難しすぎるという方には、高校英語のレベルでも何とか読める子供向け「ロビンソン」のサイトもありますから、まずはこちらから試してみるとよいかもしれません。 挿絵付きで、全49話となっています。
→ Robinson Crusoe for Children by James Baldwin
なぜ対訳か?: というと、外国映画を観るなら「吹き替え」より「字幕」の方が言葉の持つ響きが伝わるのと同じ理由で、翻訳した文章でもできれば原文と並べておく方が良いからです。 翻訳で分りにくい箇所というのは大抵誤字か誤訳であることが多く、辞書を引きながらでもいいから原文と比較してみると、その間違いに気付くだけでなく英語の勉強になるというメリットもあります。
たとえば嵐の夜に海上から砲火が閃いた時、"in about half a minute"(約半分後)に音が聞こえた―というところが、ある翻訳本では「約半秒ののち」(岩・文庫)となっています。(音速:340m./秒×30秒≒10km.)
"going back about twenty paces"(20歩ほど後退して)というところでは「約20分ほど引き返して」(集・文庫)―となっているものもあって、それだけでも意味がだいぶ違ってしまうだけでなく、翻訳だけで読んでいるとそれが間違いとは気付きにくいのです。
ロビンソンの丸木舟が激しい潮流に押し流されて島からどんどん離れていった時、Y氏訳では「それが30分ほどして」となり、H氏訳では「およそ半時間もたって」、H.S氏訳では「それから一時間半ぐらいたって」―となっていますが、訳文比較だけではどれが正しいのか判らないでしょう。 ちなみに原文では "in about half an hour more" ―となっています。
第9章11話に "as Father Abraham to Dives" とあるのは新約聖書ルカ伝からの引用ですが、その部分を翻訳している本のほとんどは「父アブラハムがダイヴズに向かい」―となっています。 それではユダヤ人の父祖であるエィブラハムにダイヴィズという息子がいたように思えますが、 "Dives" はラテン語訳の聖書から引用された言葉で、英語に直すと "Rich Man"(金持ちの男)になり、人の名前ではありません。
比較的新しい訳の平野氏訳では「父アブラハムが富める人にいった」、その後の増田氏訳では「父アブラハムがダイヴィス[富者]にむかって」、となっています。 このブログでは聖書を読まない人でも判るように、「(ユダヤ人の)父祖アブラハムが生前金持ちだった男に対して」―としておきましたが、「先祖」や「始祖」を指す "Father" を「父」と訳すのも、聖書と無縁な人にとっては分かりにくいものです。
翻訳に当たっては最初手元にあった文庫本を参照してみたのですが、どうも意訳してある箇所が多くてあまり参考になりませんでした。 それで調べてみると、現在日本で販売されている翻訳本は子供向けも含めると十数冊もあって、大きく分けて「原文にほぼ忠実なもの」、「冗漫でくどい部分を省いたもの」、「あらすじだけの子供向けのもの」となります。
原文に忠実なものは現代の我々には退屈で冗漫な箇所が多すぎて読みにくいし、かといって子供向けでも困りますから、このブログは少しだけ簡略化してあります。 それは途中で読むのが嫌になっては何もならないからで――といっても冗漫で重複している部分を削除するくらいで、文章の省略や変更はしていません。 ただし、明らかに前後で矛盾していると思われる数値には修正を加えておきました。 そうでないと、苦労して構築してきたリアリティ(真実味)というイリュージョン(幻想)が簡単に崩れ去って、読者を興ざめさせてしまうからです。
更にこの小説で一番面白く興味深いのは「無人島に漂着してから島を出るまで」のサバイバル(生き残り)生活で、それから先は蛇足に過ぎませんから、このブログはその部分のみを訳した抄訳となっています。 巻末に「翻訳本の比較」も載せておきますので、続きや最初の部分も読んでみたい方はそちらを参照して下さい。
デフォーの時代は大した娯楽も無く今よりのんびりしていたので、物語を主人公の誕生から書き始めても読んでもらえたのですが、現代では無人島にたどり着く前に本を閉じてしまう読者の方が多いでしょうから、私も無駄な努力は省くことにしました。
対訳はできるだけ関係代名詞などを無視して、原文と同じ配列になるようにしてあります。 原文と対比しながら読むことを目的としているので、単語や熟語などの意味も分かるよう直訳に近い形にしておきました。 つまり一番読みにくい訳文と言えるかもしれませんが、あくまでも原文の補助ということです。 一番良いのは翻訳に頼るより原文を読むことなので、一度訳文を読んで内容が分かったら、二回目からは原文にもチャレンジしてみて下さい。
英語版の「ロビンソン・クルーソー」はインターネット上で閲覧することができます。
"Robinson Crusoe by Daniel Defoe"
(このサイトは閲覧だけでなく、無料で ファイルのダウンロードもできて、アメリカ国内であれば配布も自由ということです)
もう一つ別に N.C.Wyeth (ワイエス)の素晴らしい挿絵が付いたサイトもあります。
"N.C.Wyeth - Robinson Crusoe"
![]() |
| Picture by N.C.WYETH (1920) |
![]() |
| Walter Paget 1891 |
「ロビンソン・クルーソー」は300年もの間に世界中で翻訳されて、英語版だけでも様々な版がありますから、両者は比べてみると微妙に違います。 このブログではその両方を比較して、良いと思われる方を採らせてもらいました。
この小説には本来「章」による区分けはありませんが、それだと読みにくいので多くの本は何章かに分けてあります。 このブログも上記ウェブ・サイトを参考に、その中の3章~18章までを訳してみました。 3章~10章までの孤独な生活を前半(2010年度分)、フライディやスペイン人など他の人物が徐々に登場してくる11章~18章までを後半(2009年度分)として、どちらも8章:100話ずつに分けてあります。
イギリスの「ヤード・ポンド法」の単位も日本人には判りにくいものなので、「メートル法」の換算値を付記しておきました。
原作の英語では難しすぎるという方には、高校英語のレベルでも何とか読める子供向け「ロビンソン」のサイトもありますから、まずはこちらから試してみるとよいかもしれません。 挿絵付きで、全49話となっています。
→ Robinson Crusoe for Children by James Baldwin
(2010年8月30日:記)












